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約25cmで厚さが2cm程度の板状トランスデューサ2枚を約15cmの間隔で並行にならべたセンサー部と、電源及び固波数発生器、FFTアナライザー等からなる本体より構成されています。原理としては、センサー部における2枚の板状トランスデューサ間に生じる5次から20次程度までの共振周波数が、気泡により減衰するという効果を利用したもので、減衰する共振周波数により気泡のサイズを、その減衰量より分布密度を計測します(図-1)。例えば、5kHzの共振回波数は約600μmの半径の気泡に、200kHzの共振周波数は、約15μmの半径の気泡に対応しています。厳密には、海水中の痔速の変化、深度による気泡の形や大きさの変化による影響等を考慮しなければなりません。このグループでは音響の1周波数帯を上げることにより、海底を移動する堆積物の計測に応用することも計画しております。このシステムが海底堆積物の計測に応用できると、従来の光学的な手法と異なり長期間の計測が可能になります。光学的な手法では、光源等センサーの汚れが高濁度域での観測に障害となっているからです。私の興味は堆積物の計測にあり、将来、この手法の応用の可能性を探っています。また、音響グループで実施している海洋の流れの計測手法として、「音響シンチレーション: Acoustic Scintillation」という手法があります。「音響シンチレーション」は数百mがら数kmの海峡において、約60cm間隔で並べられた4個の送信用トランスデューサと海峡等を隔てて、同じ様に、並べられた受信用トランスデューサ(同-2)との間を約67kHzの音響信号が多数の経路で伝播する際に、流れの中の乱れの強さ、

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図-1 受信れた音響信号の周波数レベル(Laman,1995)。気泡(バブル)により周波数レベルが減少していることがわかる

密度の変化によって伝播経路が変動するという特性を利用して、流れの構造を計測する手法です(図-3)。従来は1方向のみの音響伝播を利用していたのに対し、双方向の音響の送受信が可能なシステムを開発しています。従来の1方向の伝播に比べ双方向伝播により、計測精度の向上が図られると共に乱れの強さの空間分布を直接計測できるようになります。この手法は、将来深海に応用することにより、海溝やトラフの流れ構造の計測に応用でき、従来の流速計による点計測から空間計測に発展可能と思われます。
このシステムに関する観測は本年11月ごろに、黒海と地中海を結ぶボスポラス海峡で実施される予定です。ボスポラス海峡は、水深30〜l00m、幅0.7〜1.3km、長さ約31kmの海峡で、黒海の淡水と地中海の高塩分水が海峡を通して流入出しており、海峡内においては密度成層二層流が形成されています。すなわち、黒海から地中海へ流出する上層の淡水と、地中海から黒海へ流入する下層の海水が上下逆方向に流れる二層交換流を形成しているのです。海峡の流れ構造は、黒海における降雨量、流入河川の流量に依存した海面水位および、海峡における海峡幅の変化、海底地形、海底・内部成属境界面の摩擦、

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図-2音響シンチレーションの送信及び受信部(Farnner et al., 1991)

 

 

 

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